Enzymes, NGS, Black male scientist looking at test-tube filled with substance in a laboratory setting
分子生物学用酵素

PCR & DNA増幅

ほとんどのin vitro増幅アプリケーションでは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に熱安定酵素を使用します。最もよく使われているPCR酵素はTaq DNAポリメラーゼです。Taq DNAポリメラーゼは、70°C以上の温度で生育する好熱性の真正細菌であるThermus aquaticusに由来します。そのため、Taq DNAポリメラーゼの最適な酵素活性が約72°Cで得られるのです。

通常のTaqポリメラーゼの至適温度は72℃で、この酵素は37℃付近から活性を示します。この低温での活性はかなり高く、PCRの最初の低温段階で非特異的増幅やミスプライミングを起こしやすいという欠点があります。PCRの自動化も必要な場合は、hot-start Taqポリメラーゼの使用を検討してください。

Hot-startポリメラーゼは通常のTaqとは異なり、室温では反応しません。Hot-start PCR技術は、従来のPCRと同じ原理ですが、最初の変性ステップが完了するまで酵素活性は抑制されています。これにより、非特異的結合やミスプライミングは最小限に抑えられ、特異性が向上します。さらに、この技術は室温で反応をセットアップできるため非常に便利であり、PCRの自動化が可能になります。特異的な標的の増幅に必要な反応成分が非特異的増幅によって枯渇するのを妨げるので、感度が改善されることもあります。

すべてのTaqポリメラーゼは、以下の用途に適しています。

3'-Aオーバーハングを用いたTAクローニング
3'-Aオーバーハングを用いたTAクローニング
Taqによって3’末端に1塩基のA が付加された二本鎖DNAを、相補的な3′-T突出末端を持つベクターと結合さえせるクローニング手法。
単一コロニーPCR
単一コロニーPCR
細菌を溶解し、インサート特異的またはベクター特異的プライマーを用いたPCRでインサートを迅速にスクリーニングします。
ジェノタイピング
ジェノタイピング
変異に特異的なプライマーを用いたPCRで、生物のジェノタイプ(例:野生型、変異型)の判定。
修飾オリゴヌクレオチドを用いるPCR
修飾オリゴヌクレオチドを用いるPCR
dNTP、ddNTP、dUTP、イノシン、ビオチン-11-dUTP、DIG-11-dUTP、蛍光-dNTP/ddNTPなどを基質として用いたPCR。
通常のPCR、または自動化やハイスループットPCRアプリケーションに適したhot-start酵素を酵素の特性から選択してください。
酵素   特性 付属品

  Hot-start
(x 分、95°C)
アンプリコンサイズ 伸長効率 5’-3’
エキソヌクレアーゼ
PCRバッファー ローディングバッファー
P7250L
Taq-B (Taq)

近日発売 ✘ No <5 kb
72°Cで2–4 kb/分

✔ Yes ✘ No ✘ No
P7620L
TaqIT *(Stoffel)

近日発売 ✘ No <7 kb 72°Cで2–4 kb/分
✘ No* ✔ Yes ✘ No
201203
Taq

  ✘ No <7 kb 72°Cで2–4 kb/分
✔ Yes ✔ Yes + Q‑Solution ✔ Yes
201223
Taq PCR Core Kit

  ✘ No <7 kb
72°C で2–4 kb/分
✔ Yes  ✔ Yes + dNTPs ✔ Yes
203123
AllTaq PCR Core Kit

  ✔ Yes(2分) <9 kb 68°Cで1 分/kb
✔ Yes ✔ Yes + dNTPs ✔ Yes
203203
HotStarTaq
  ✔ Yes(15分) <7 kb 72°Cで2–4 kb/分
✔ Yes ✔ Yes + Q‑Solution ✘ No
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PCRにTaqポリメラーゼが使用されるのはなぜでしょうか?

Taq DNAポリメラーゼ(Taq)は、細菌のDNA修復やほとんどのバクテリオファージのDNA複製に関連する酵素のグループであるポリメラーゼFamilyAに属します。FamilyAポリメラーゼは一般に、複製と修復の両方の活性を備えています。3’→5’エキソヌクレアーゼ活性は、ミスマッチヌクレオチドの修復を可能にする重要な“プルーフリーディング”機能を提供し、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性は、RNAプライマーの除去を可能にします。Taqポリメラーゼでは、3’→5’エキソヌクレアーゼのプルーフリーディングドメインが機能していません。

PCRでは、細胞の複製系で必要とされるのと同じように、ポリメラーゼの信頼性、正確性、フィデリティ、速度、処理能力といった基本的な性能が問われます。ポリメラーゼの正確さ(フィデリティ)とは、テンプレート鎖が指定したとおりに正しいヌクレオチドを取り込むことを指します。DNAポリメラーゼは、ヌクレオチドが取り込まれる部位にある一連の分子チェックポイントを利用して、正確な複製を保証します。通常のTaqポリメラーゼは、総エラー率が比較的に低く非常に正確ですが、3’→5’エキソヌクレアーゼ“プルーフリーディング”活性がないため、酵素が有効に利用できるアンプリコンサイズが制限されます。Taqは、2 kb未満のDNA断片の増幅に最適であり、堅牢で反応の最適化が容易な酵素です。この酵素は3–4 kbまでの断片で機能しますが、長さが約3 kbを超えるアンプリコンでは効率が急速に低下します。

Taq DNAポリメラーゼの修飾は、hot-start PCRにどのように作用するのでしょうか?

Hot-start PCRは、より高温に達するまで酵素を不活性にすることによって増幅をブロックするDNAポリメラーゼの修飾によって実現されています。一般的な修飾には抗体相互作用、化学修飾、アプタマー技術などがあります。PCRサイクル中に反応温度が許容範囲に達すると、阻害剤がポリメラーゼから解離し、反応が始まります。

抗Taq DNAポリメラーゼ抗体は、ポリメラーゼに結合して酵素を不活性化し、低温での初期のDNA増幅を防ぎます。最適なアニーリング温度に達すると、抗体の分解と解離が始まり、Taq DNAポリメラーゼ(Taq)を反応内に放出し、増幅プロセスが開始します。

化学的に修飾されたTaq DNAポリメラーゼ(Taq)には、特定のアミノ酸残基に熱不安定なブロッキング基が結合しています。これはPCR反応の最初の熱活性化ステップで除去されます。これによって、Taq DNAポリメラーゼ(Taq)は完全な活性を取り戻し、PCRサイクルを続行できます。
アプタマーを介したhot-start PCRでは、オリゴヌクレオチドアプタマーの結合によるTaq DNAポリメラーゼ(Taq)の機能が阻害されています。アプタマーは熱不安定な化学ブロッキング基や抗体よりも低温で酵素から解離するため、高温での活性化ステップが不要となり、Pされてロトコールが加速されます。さらに、アプタマーベースの阻害は完全に可逆的であるため、熱サイクル終了時にTaq DNAポリメラーゼ(Taq)活性もブロックされます。

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