NGSアプリケーション用のDNAをFFPE組織から調製するのには、いくつかの課題があります。サンプルの重要な特性やDNAの損傷状態により、収量が制限されます。さらに、限られた量のスタートサンプルの場合、固定と包埋条件および長期保存により引き起こされるアーティファクトが、シークエンシング結果に広く認められます。特有な問題の一つは、シトシン塩基からデオキシウラシルへの脱アミノ化があります。これにより、シークエンシング反応においてCからTへの変換をもたらされます。この正確なメカニズムは不明ですが、一つの説明として、脱アミノ化によりシトシンがその位置でウラシルに変化し、これがアデニンと対になることが考えられます(図
シトシンの脱アミノ化により誤ったアデニンとのペアリング)。シークエンシングの際には、この変化した塩基は、C>T 置換として読み取られます。相補鎖の情報がライブラリー構築中に失われると、どちらかの鎖がシークエンスされ、その結果アーティファクトがC>T あるいはG>A 置換として現れます。特にがんサンプルのシークエンシング解析では、偽陽性の変異として現れることになるため、これらのアーティファクトの除去は重要です。 スタートサンプル量が少ない場合、誤った変異の相対的な頻度が増大するため、FFPEサンプルをシークエンシングする際には、収量に加えてアーティファクトを抑えることが重要です。
GeneRead DNA FFPE Kitは、少量のFFPE組織切片から高収量のDNAを効率的に精製するために能率的な操作手順を提供します。さらに、DNAシークエンシングにおいて誤った結果がでないよう、この手法には脱アミノ化されたシトシンの除去が含まれています。