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デジタルPCR

初心者のためのdPCR

 dPCRの進化

今日の研究における複雑な問いに取り組むには、従来のPCR技術の能力を超えたより深い情報を必要とします。第三世代のデジタルPCRは、そのギャップを減らし、日々の研究における問いに取り組むためにますますシンプルで、そして実用的な技術になっています。

デジタルPCRの概念は、Sykesらが「限界希釈PCR」として説明した1992年より存在しています。この一般的な方法は、エンドポイント解析とポアソン分布統計を用いて、サンプル内に存在する核酸分子の絶対数を定量するものです。その後、1999年にVogelsteinとKinzlerが革新的な仕事をしました。彼らは、サンプルをパーティションと呼ばれる個別の反応液に希釈、分配し、増幅後に蛍光シグナルを示す単一の生産物を検出および解析する方法を開発しました。その後、彼らは、今日私たちの誰もが知っている「デジタルPCR」という用語を造り出しました。

長年にわたり、これらの方法は改良を重ね、商品化されて、より広く採用されるようになっています。マイクロ流体チップ、ディスク、マイクロアレイ、マイクロドロップレット、または油-水エマルションに基づくドロップレットクリスタル上で、さらに最近ではqPCR様プレートでデジタルPCRを実施できます。

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デジタルPCRとは何ですか?
デジタルPCRの基礎、仕組み、利点と限界の概要、アプリケーションの範囲についてご紹介します。
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デジタルPCRは、核酸の検出と定量を高感度かつ再現性高く行うための高精度なアプローチです。測定は、サンプルをパーティションに分けて行いますので、個々の反応は標的分子がゼロか1個以上存在する状態になります。各パ-ティションは、エンドポイントPCRサイクルの後に、蛍光シグナルのあり(陽性反応)/なし(陰性反応)について解析し、サンプル内の分子の絶対数を算出します。これは、サンプルの標的定量用の検量線に依存しません。検量線への依存性を取り除くことで、エラーを減らし、精度を上げます。

サンプル希釈とPCR反応ミックスの設定
サンプル希釈とPCR反応ミックスの設定
青 - 標的 赤 - バックグラウンド(gDNA、cDNA、プライマー/プローブ、マスターミックス)
PCR反応を数千もの個別の反応にパーティショニング
PCR反応を数千もの個別の反応にパーティショニング
パーティションのエンドポイントPCR増幅
パーティションのエンドポイントPCR増幅
緑 - 陽性反応 青 - 陰性反応
読み出しと絶対定量
読み出しと絶対定量
パーティショニングと制御

サンプルをqPCRの場合と同様に調製しつつ、サンプルを増幅前に何千という個々の反応液に分割するサンプルパーティショニングは、デジタルPCRに独特のものです。分割内に分子がランダムに分布することにより、qPCRのバルク解析とは異なり、デジタルPCRは、競合する標的の影響を最小限に抑え、希少な標的を検出する精度と感度を強化します。

これにより、次のことが可能になります。

  • 定量の標的または複雑なバックグラウンドの中の標的を定量する
  • 対立遺伝子の変異体(SNP)を検出・識別する
  • qPCRでは検出不可能な標的レベルの小さい変化をモニターする
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有効濃度を上げます
  • 検出限界(LOD)を向上させます
  • 単一の標的分子を増幅し、検出します
濃縮効果をもたらします
  • – バックグラウンドに対する標的の比率を上げます
優れた精度と直線性を提供します
  • 個々の分子を集合体の濃度に対して測定します
  • パーティションが多いほど、精度が高くなります
  • パーティションが多いほど、ダイナミックレンジが広がります
dPCRとqPCRの選択
2つの方法を比較・対照して、いずれの方法があなたの必要に最もふさわしいか把握し、現在お使いのqPCRアッセイをdPCRに移行する方法をご覧ください。
ポアソンの法則は分割に意味を与える

リアルタイムqPCRに反して、デジタルPCRは、各増幅サイクルに依存して標的分子の相対量を決定するのではありません。むしろ、ポアソン分布統計に依存して、エンドポイント増幅の後、標的の絶対量を決定します。

標的分子は、利用可能なすべての分割にランダムに分布しているため、ポアソン分布は、分割あたりの分子数の平均値(ゼロ、1以上)を推定し、陽性の区画あたりの標的分子のコピー数を算出します。陽性反応と陰性反応の数についてのポアソン分布の統計解析は、標的配列の正確な絶対量を割り出します。

統計を絶対定量に適用する

デジタルPCR実験の背景では、絶対定量は、全パーティションにわたる標的分子のランダムな分布に依存しており、データはポアソン分布にぴったり合う事が期待されます。ポアソン分布は、1837年フランス人の数学者Siméon Denis Poissonにちなんでその名前を得て、ある事象が既知の一定の割合で生じ、過去の事象の発生とは無関係である場合、一定期間内に与えられる事象の数の確率に適用されます。


初心者向けdPCRガイド
ワークフローを通して、チュートリアルと初めてのデジタルPCR実験を計画して差し上げることで皆さまをガイドします。
干し草の山の中で針を見つける-デジタルPCRの力
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講演者:Laima Antanaviciute、Ph.D.、Market Development Manager – dPCR/PCR、QIAGEN

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デジタルPCRの利点とそのアプリケーション-分割の力
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講演者:Daniel Heinz Löfgren、M.Sc.、Market Development Manager – dPCR/PCR、QIAGEN
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高精度の分子測定のためのデジタルPCRの使用
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講演者:Dr. Jim Huggett、Principal Scientist、National Measurement Laboratory
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絶対定量と相対定量の違いは何ですか?
デジタルPCRを使用した絶対定量は、単にサンプル中に存在する分子数をカウントします。 既知の標準物質は必要ありません。qPCRで標準曲線を使用した絶対定量では、未知の物質は、既知の量を使用して定量します。 相対定量は、参照サンプルを使用して、参照サンプルに対して、目的の反応内のテンプレートDNAの元のコピー数を比較し、決定します。 
PCR技術のアプリケーションにはどのようなものがありますか?
PCR技術のアプリケーションには、ターゲット核酸の有無の判定、遺伝子型決定、遺伝子発現の定量、アッセイの検証、微生物ターゲットの検出、NGSライブラリーの定量などがあります。
dPCRの精度はどのくらいですか?
デジタルPCRは核酸を正確に定量する方法です。研究では、dPCRにより、特に阻害剤または野生型集団の存在下で、少数のコピーの分解や単一分子の計数の精度が大幅に向上することが示されています。デジタルPCRは、従来のqPCRに比べて検出限界が低く、ラボ内での再現性が高くなります。
dPCRはどのように作動するのですか?
dPCRの最初の反応は、qPCRと同様になじみのあるアッセイのコンポーネントを使用してデザインが可能である事を知ることで、あなたは安心することでしょう。しかしその後は、各サンプルを数多くの個別で平行する反応物に分散化または分割することにより、いくつかのパーティションでは1個以上の標的分子を含み、別のパーティションでは何も含まないということになります。パーティショニングとは、サンプルをキャピラリーまたはチャンネル、ミニチュアチャンバーのアレイ、あるいは液滴として油水エマルションを含むマイクロプレート内に分けることです。それぞれのパーティションは、エンドポイントまでPCR増幅を進めます。増幅産物を含むパーティション、含まないパーティションを個別にカウントします。 増幅産物を含み、蛍光シグナルを示すパーティションは陽性とみなし、「1」としてスコアを付けます。増幅産物を含まず、バックグラウンドシグナルしか含まないパーティションは陰性とみなし、「0」としてスコアを付けます。それから、ポアソン分布の統計解析を適用して、参照サンプルや標準曲線に依存することなく、最初のサンプル内に存在した標的の絶対濃度を決定します。
どのアプリケーションがdPCRから恩恵を受けますか?
希少な事象の検出、コピー数多型の解析、少量の転写産物の遺伝子発現解析など、少量のインプット核酸検出、または標的の量の向上した分解能を必要とするアプリケーションは、dPCRの分割効果から多大な恩恵を受けることができます。液体生検、単一細胞解析、NGSライブラリー定量、少量のウイルス量や細菌量の定量、遺伝子編集イベントの解析、GMO検出などのアプリケーションは、デジタルPCRがもたらすqPCRに勝る感度の高さとかなりの厳密性も利用できます。多くの研究者にとって、dPCRはqPCRへの補完的なアプローチとなります。
dPCRには、どのような種類のテンプレートを使用できますか?
血液、組織、細胞、腫瘍、細胞培養物 、スワブや洗浄液から分離したゲノムDNA、FFPE DNA(ホルマリン固定パラフィン包埋DNA)、cfDNA(循環遊離DNA)、ctDNA(循環腫瘍DNA)、重亜硫酸塩処理DNA、環境DNA、cDNA、細菌DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、ライブラリーDNA、およびgBlockや長いオリゴヌクレオチドなどの合成DNAからトータルRNA、マイクロRNA、lncRNA、ウイルスRNA、細菌RNA、in vitro転写RNAに及ぶ出発物質を使用できます。
デジタルPCRは、デジタルドロップレットPCRと同じですか?
いいえ。デジタルPCRはすべてのデジタルPCRメソッドの総称であるため、デジタルドロップレットPCR(ddPCR)に限定されません。たとえば、ddPCRはPCRサンプルのパーティションとしてドロップレットを使用しますが、他のデジタルPCRメソッドはマイクロ流体プレートやマイクロ流体チップなどの原理に基づいています。
デジタルPCRは通常のPCRとどのように違うのですか?
これは通常のPCRの定義によって異なります。エンドポイントPCRは、核酸の定性分析または半定量分析にゲル電気泳動を利用します。定量的PCR(qPCR)は、標準曲線に基づいて核酸濃度をリアルタイムで測定できます。デジタルPCRは、エンドポイントPCRにパーティショニングと統計学を組み合わせることにより、核酸の絶対定量を行います。
デジタルPCRテストとは何ですか?
デジタルPCRテストは、核酸を絶対定量する方法です。PCR反応を数千のパーティションに分割し、そこでターゲット核酸を個別に増幅します。蛍光プローブや色素を用いて、各パーティション内の産物の有無を検出します。
デジタルPCRとddPCRの違いは何ですか?
デジタルPCRとドロップレットデジタルPCR(ddPCR)の違いは、パーティションの作成方法にあります。ナノプレートdPCRでは、サンプルはマイクロ流体dPCRプレート上で数千のパーティションに分割されます。ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)では、サンプルを数千から数百万のドロップレットに分割し、ドロップレットリーダーで1つずつ分析します。
デジタルPCRニュース
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