デジタルPCR

デジタルPCRのヒントとコツ

技術の進歩によりデジタルPCR(dPCR)がますます入手しやすく、手頃な価格になっているため、デジタルPCR(dPCR)への関心が高まっています。その結果、dPCRは、ライフサイエンス研究や臨床アプリケーションに大きな影響を与える可能性があります。弊社は、2019年10月にゲストウェビナーを主催し、この有望なテクノロジーを活用するためのガイドラインについて話し合いました。

ウェビナー参加者から多くの興味深い質問が寄せられました。ゲストスピーカーからの洞察に満ちた回答と、上位20の質問の内容をまとめましたのでお読みください。

このウェビナーの記録とウェビナー後のディスカッションを聞くには、以下のリンクをクリックしてください。

TATAA Biocenter ABおよびCASのバイオテクノロジー部門のDr. Mikael Kubistaによる“「Tips and tricks for more accurate digital PCR(より正確なデジタルPCRのヒントとコツ)」”

 

記録したウェビナーセッション – こちらをご覧ください 

この専門家向けウェビナーで、Dr. Kubistaは、TATAAバイオセンターでの12年近くにわたるデジタルPCRを使用したアプリケーション開発とサービス提供に関する経験を共有しました。彼と彼のチームは、dPCR分析ワークフローに共通するすべての問題を克服し、エラーのリスクを最小限に抑え、確実性と再現性を最大化するための確実な標準的操作手順を開発しました。彼らは、性能をテストし、メソッドを検証するためにさまざまなコントロールを開発しました。また、コピー数の決定まれな突然変異検出のための戦略に焦点を当て、dPCRアッセイの設計と検証のヒントとコツを共有しました。

 

ウェビナー後のQ&A:

1.6コピー/パーティションと80%飽和の計算は、10kパーティションに基づいています。パーティション数が増えると、どのように変化しますか?

変化しません。パーティションあたり1.6コピーは、80%飽和に対応し、パーティション数に関係なく、精度に関して最適な条件です。ただし、パーティション数が増えると、一般に不正確性(エラー)は減少します。

 

パーティション数を増やすと、LOD = 3ではなく単一分子を検出できますか?

アッセイが良好だと仮定すると、PCRは単一分子を増幅するので検出できます。LODは、分子が存在する場合、検出には関係ありません。サンプル全体(患者の血液など)のごく一部のみを分析するので、チップにロードされる分子の確率に関係します。確率95%で陽性となるには、サンプルに、分析対象の総量あたり少なくとも3つのターゲット分子が含まれている必要があります。したがって、サンプルに、分析する容量あたり3つのターゲットが含まれており、実験を100回繰り返す場合、100回のうち95回が陽性で、5回が陰性であると予想されます。LODは測定技術に依存しません。曖昧なサンプリングの結果です。

 

両方のターゲット配列を含む合成フラグメントを使用して、ValidPrimeに対して新しいアッセイを検証するとき、2つのアッセイで測定した濃度が異なるのはどのくらいの頻度ですか?

同じ分子の一部なので濃度は同じですが、おそらく測定量が異なるかどうかお尋ねなのだと思います。さまざまなラン条件が必要になる場合があるため、各アッセイを個別に最適化するシングルプレックスとしてアッセイをランすることが重要です。最適化すると、社内で設計したほとんどのアッセイが検証に合格します(すなわち、ValidPrimeと同じカウント)。

 

ドロップレットベースのdPCRを使用すると、絶対定量精度が向上しますか?

標準曲線に基づいてテストサンプル濃度を推定する場合、不確実性はいくつかの要因に依存します。測定の不確実性はその1つです。再現性はqPCRよりもdPCRでの方が高いので、線形応答のため、理論的にはこれが当てはまると思います。実際には、ほとんどのワークフローには、分析ステップよりも混乱を招くアップストリーム分析前ステップがあります。このような場合、差はありません。

 

説明したdPCRに対するより高い多重化オプションに基づいて、すべてのdPCRプラットフォームにハーフプローブ希釈を使用できますか?

はい。ただし、クローン増幅が必要であることにご注意ください。これは、パーティション数が多いプラットフォームでは簡単に実現できます。

 

単一色素アッセイを使用して二重化するとき、プライマー効率はターゲット配列の分離に影響を与える可能性があります。私は最近、二重アッセイで同じ色素を使用しました。プライマー濃度を変えなくてもターゲットを区別できました。これはプライマー効率の問題でしょうか?

アッセイ効率の話をしているのだとすると、確かに、この戦略を使用して正しいターゲットを区別できます。プライマーのTmまたはアンプリコンが異なり、長さが異なって必要な伸長時間が異なると、全く異なる効率でターゲットを増幅するサイクリング条件を設定できます。ターゲットは、Cq値によって簡単に区別できます。ただし、これにはリアルタイム検出が必要です。また、従来のエンドポイントdPCRでも区別できる可能性がありますが、確実性ははるかに劣ります。

 

dPCRを使用してDNA濃度を定量化する方法は?

マウス、ヒト、ラットでは、ValidPrimeアッセイ が利用可能です。他の生物については、アッセイを設計および検証する必要があります。これは、対象DNAのシングルコピーアリルをターゲットとする複数のアッセイを設計し、dPCRを実行することによって行います。複数のアッセイで同じカウントが得られる場合、これらのアッセイは実際にシングルコピーアリルをターゲットとし、定量的であると想定するのが妥当です。詳細については、http://www.tataa.com/services/をご覧ください。

 

精度に関してdPCRの検証手順を推奨できますか?

精度には、標準メソッドまたはリファレンスメソッドのいずれかとの比較が必要です。ヒトゲノムDNAについては、SRM 2372aまたはSRM2372aに対してキャリブレーションした二次標準 と比較します。

 

ValidPrimeターゲットシークエンスはどのくらいの長さですか?

ヒトValidPrimeのターゲットシークエンスは143 bpであり、このアッセイは広範囲にわたって特徴付けられています

 

標準の化学合成に不完全な副産物がないことを、どのように証明しますか?

証明する必要はありません。ValidPrimeアッセイを使用して、(合理的に)インタクトな標準の量を測定します。

 

試薬を洗浄する必要がありますか?

実験内容次第です。コピー数多型(CNV)測定の場合、試薬中のヒトgDNA汚染はごくわずかであると予想されます。細胞内のミトコンドリアの定量では重要かもしれませんし、古代DNAの解析では極めて重要かもしれません。

 

EvaGreenベースのターゲット検出は通常、プローブベースのアッセイよりも「面倒」です。EvaGreenアッセイをどのように改善できますか?

EvaGreenは存在するすべてのdsDNAに非特異的に結合するので、バックグラウンドはドロップレット内のフラグメントの長さに依存します。通常、できれば制限開裂(ターゲット配列の切断を回避するため)または超音波処理を使用して、フラグメントの長さを均一化することにより、バックグラウンドレインを減らすことができます。また、ロードするDNAの総量を減らすことで、レインを減らすこともできます。

 

すべてのdPCR機器の性能は同等ですか、それとも他の機器よりも優れている機器がありますか?

dPCR機器の性能は、パーティション数、チャンネル、リアルタイム検出、複数の読み出し、開閉システムなどさまざまな機能を持つため異なります。機器のコストはこれを反映しています。どれが最適かは、お客様のニーズによって異なります。TATAA dPCRコースへの参加をご検討ください。すべての主要なプラットフォームをテストすることができますので、意思決定に役立ちます。

 

私は、分子診断環境の病原体検出にddPCRを使用しています。ddPCRを使用して、qPCRアッセイをどの程度、キャリブレーションできますか?

アッセイ条件が同じ(同じプロトコールと試薬)であれば、キャリブレーションは信頼できます。しかし、フィールドサンプルの阻害は一般的であり、テストする必要があります。これは、スパイクを使用して行います。

 

qPCRとdPCRの感度の比較について。機器に入れるサンプル量は、定量限界を決定するものですね? dPCR機器およびqPCRの通常のサンプルインプット量はどのくらいですか?

サンプリングノイズ(ポアソン分布)が支配的な条件下では、分析する総量が定量限界になります。qPCRでは、分析する量に大きなバラツキがあります。BioMark IFC(Fluidigm)の反応量はわずか約10 nLであり、サンプルを事前に増幅して濃度を上げない限り、精度はありません。同時に、aAmp(AlphaHelix)はスーパー対流を使用して100 µLを分析します。dPCRでは通常、より多くのサブアレイまたは複数のチップをランすることにより、総量を制御できます。たとえば、QX200のドロップレットサイズは0.85 nLであり、20,000ドロップレットと仮定すると、分析総量は17 µLになります。

 

dPCRは、SNPを使用する品質管理アプリケーションに適していますか(たとえば、0.1%スケールでまれな対立遺伝子の濃度を正確に推定できますか)?

はい、確かにできます。これは最も人気のあるアプリケーションの1つです。複数の野生型分子を含むようなパーティションで偽陽性が検出されないようにするため、アッセイは依然として特異的である必要があります。

 

dPCRのプローブの設計にはどのソフトウェアを使用するのですか?

dPCRのアッセイ設計はqPCRと同じです。標準アッセイ設計パイプラインを使用します。

 

Eva/SYBR ddPCRの最大DNAサイズはどのくらいですか?

多くの蛍光が生じるので、長いアンプリコンの方が望ましいです。テンプレートをコピーするのに十分な伸長時間がある場合は上限はなく、二次構造に問題はありません。100–250 bpが、目標とする妥当な範囲です。

 

ひとつの反応で異なる濃度のプライマーを使用する多重化についてもう少し説明していただけますか。これは機器だけを使用して簡単に区別できますか、それともこのような結果の分析に追加的なツールが必要ですか?

適切に設計および検証したアッセイ、クローン増幅、複雑ではないサンプルの場合、標準的な機器ソフトウェアで区別できるはずです。ただ、最適化するには複雑なシステムなので、多重化にプローブを使用することをお勧めします。

 

ValidPrimeアッセイまたはリファレンスアッセイを細菌プロセスに使用できますか? 細菌ターゲットを検証できますか?

検証は合成テンプレートで行われるので、標準ValidPrimeアッセイを使用して、任意のターゲットに対して新たに設計したアッセイを検証できます。ただし、内因性リファレンスとして使用するには、ValidPrimeアッセイはその菌株をターゲットにする必要があります。TATAAは、限られた数の検証済みの種特異的ValidPrimeアッセイしか提供しませんが、文献には学術グループが開発したものがもっと見られると思います。それほど広範囲に検証されていない可能性がありますが、お客様の目的には十分だと思われます。